胃潰瘍
胃潰瘍(いかいよう)は、胃から分泌される胃酸と、胃酸から胃壁を守る粘液の分泌とのバランスが崩れ、胃酸によって胃壁に穴が空き、痛みを感じたり、場合によっては出血を起こす病気である。重度の胃潰瘍の場合は、胃壁の穴が胃の外側にまでつながる場合もある。
胃潰瘍の症状や治療法の多くは十二指腸潰瘍にもあてはまるため双方を総称して消化性潰瘍と呼ぶ。違いとしては、十二指腸潰瘍は若者に多く胃潰瘍は中年以降に多い点が挙げられる。
また、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori) 保有者は、非保有者に比べてこの疾患の発症率が高い。
症状
胃潰瘍の症状としては腹痛(上腹部痛)が代表的ではあるが、背部痛、食欲がない、体重減少、吐血(鮮血の場合もあり、コーヒー残渣様の事もある。)、下血(大量出血の場合は泥状の黒色便、さらに大量に出血した場合には血性の便)、胸焼け、もたれなど多彩であり、検診の発達した日本では、偶然発見され全く症状のない場合も極めて多い。
胃潰瘍の重要な合併症としては、出血と穿孔があり、一刻も早い専門医での治療が必要である。 出血した場合には、頻脈、冷汗、血圧低下、気分不快、吐血、下血などの症状が出現する。 穿孔の症状としては、持続性の非常に強い腹痛、圧痛、反跳痛、筋性防御、発熱などがある。
食後に腹痛が増悪する場合は胃潰瘍、食前に増悪する場合は十二指腸潰瘍である場合が多いとされているが、実際にはそうであるとは限らない。 同様の症状を生じる疾患として、機能性ディスペプシアの頻度が最も高く、その他に十二指腸潰瘍、逆流性食道炎、急性膵炎、慢性膵炎、胆石、胆嚢炎など除外診断すべき疾患は極めて多い。
診断
上述のような症状で胃潰瘍(消化性潰瘍)が疑われた場合、直接胃潰瘍を証明するには、通常上部消化管内視鏡検査(俗に胃カメラ)が行われることが多い。内視鏡検査の最大の利点は、出血していれば即治療が可能なことである。
もちろん、全身状態の把握や、合併症の有無、除外診断の目的で、血液検査や単純レントゲン写真、腹部超音波検査(エコー検査)などを組み合わせて行う場合もある。
バリウム造影レントゲン検査は、穿孔などの合併症がある場合には禁忌であるので、症状が強い場合などには臨床の場で行われることは極めて少ない。検診では使用されることがある。
治療
消化性潰瘍出血
消化性潰瘍出血は命の危険もある急性期疾患である。消化性潰瘍出血の治療には外科的治療と内科的治療がある。 1980年以前には潰瘍出血に対する第一の治療は外科的切除であったが、H2ブロッカーと呼ばれる胃酸分泌抑制薬が発売され、胃酸のコントロールが可能になると出血が極めて減少したため以降、手術数は激減した。しかし現在でも穿孔や、内視鏡的に止血・コントロールできない出血に対しては外科的切除が行われている。
内科的治療には、内視鏡治療と、薬物治療がある。 胃潰瘍より出血している場合はクリッピングあるいはヒートプローブを用いて内視鏡的止血術を行う。 薬物治療の主役はH2ブロッカー(ヒスタミンH2受容体拮抗薬)からプロトンポンプインヒビター(プロトンポンプ阻害薬)へと移行し、極めて効果的である。
安定期の消化性潰瘍
内視鏡的治療を必要とするほどでない消化性潰瘍である場合は、出血性消化性潰瘍の発生リスクを減少させるため、プロトンポンプ阻害薬やH2ブロッカーの使用が必須となる。
ヘリコバクターピロリ関連消化性潰瘍
1990年ころ、消化性潰瘍患者の多くがヘリコバクター・ピロリ(通称ピロリ菌)を保有している事実がわかった。さらにピロリ菌を除菌すると、1-2年後の潰瘍再発は20%未満に減少することも判明した。ピロリ菌は抗生剤に対する耐性が強く、除菌の失敗が10-20%にみられる。また、除菌に成功した場合でも再感染は、年0.5%程度起こる。ヘリコバクターピロリ関連潰瘍であると疑われた場合、胃潰瘍の状態が落ち着けば、除菌をすることが推奨されている。
日本ではピロリ菌の除菌療法としては、プロトンポンプインヒビターに2種類の抗生剤を組み合わせる三剤併用療法が2000年から保険適用となっている。治療期間は約1週間で、主な副作用として軟便や、味覚障害がある。
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